上海と東京を拠点に活動する中国人アーティスト、ルー・ヤン（LuYang）の作品集。作者はSF、漫画、ゲーム、テクノ文化からインスピレーションを得て作品制作をする。ビデオ・インスタレーションにおいては、ハイパーモダンな技術へ言及しつつ、我々の生きる世界に対して考察し、ポスト・ヒューマン、あるいはトランス・ヒューマン的なシナリオのアイデアを融合させている。ノンバイナリーなアバターを作るために、自身の身体を3Dスキャンしたものを用い、仏教の教えである「独生独死（人間は、生まれてくるのも独り、死ぬのも独り）」という考えを作品では示唆している。現在も制作を続けているシリーズ「DOKU」は、無秩序に広がる仮想世界におけるハイブリッドな作者の「輪廻転生」というテーマに焦点を当てており、コンピュータ・ゲーム・エンジン（開発環境）を用いて、激しいサウンドトラックをあわせている。そのような作者のデジタル作品から浮かび上がってくるのは、圧倒的に、宗教、哲学、神経科学、心理学、現代技術という多岐にわたる分野を跨いで融合したものを視覚化した、すばらしく幻想的で、時に痛烈で、衝撃的なイメージである。

ドイツ銀行がアーティストをサポートする新プログラムとして2010年に設立した「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を2022年に受賞した作者は、同年ドイツとイギリスで初の個展を開催した。 本書では、2022年の「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」で特に注目を集めた他に類を見ないシリーズ作「DOKU」に焦点を当て、キュレーターのジュリア・グリーンウェイ（Julia Greenway）、ポール・ラクラフト（Paul Luckraft）、比較文学、アジア研究を専門とするリヴィア・モネ（Livia Monnet）、映像、メディア研究を専門とするパオチェン・タン（Pao-chen Tang）がエッセイを寄稿。この新進気鋭の国際的アーティストの活動に対して、豊富な見識と洞察に満ちた内容で解説する。あわせて美術史家のノラ・ヴォルフィング（Nora Wölfing）によるインタビューも掲載している。

LuYang (b. Shanghai; lives and works in Tokyo) draws inspiration from science-fiction, manga, gaming, and techno cultures. In their video installations, references to hypermodern technologies blend with ideas for post- or trans-human scenarios for our world. To create their nonbinary avatars, LuYang works with 3D scans of their own body, alluding to the Buddhist wisdom “dokusho dokushi” (you are born alone and you die alone). The ongoing series DOKU features these hybrid “reincarnations” of the artist in sprawling virtual worlds, made using computer game engines and accompanied by intense soundtracks. What emerges from LuYang’s predominantly digital works are fantastic, often painful and shocking images that visualize an interdisciplinary mix of religion, philosophy, neuroscience, psychology, and modern technology.

The winner of Deutsche Bank’s Artist of the Year award in 2022, LuYang presented their first monographic exhibitions in Germany and the United Kingdom that year. The catalogue LuYang NetiNeti puts the focus on the singular DOKU series, which featured prominently at the 59th Venice Biennale in 2022, and includes knowledgeable and insightful essays on the rising international artist’s practice by Julia Greenway, Paul Luckraft, Livia Monnet and Pao-chen Tang, and an interview by Nora Wölfing.