パリを拠点に活動する建築事務所「スタジオ・ムオート（Studio Muoto）」の作品集。建築や都市計画そのものだけでなく、プロジェクト管理、研究、教育など活動は多岐にわたる。彼らの作品は質素かつ寛容であり、時とともに進化しうるような根源的な建築を追求している。「ムオート」はフィンランド語で「形」を意味する。

本書では、これまで手がけられてきた「ハイウェイ（幹線道路）」をテーマとした一冊であり、文章やプロジェクトの詳細、図版をもって解説されている。「ハイウェイ」はこれまで考えられてきた中で最も先鋭的な公共空間であるとともに、今日において最も賛否両論とされ批判も受け、現代性と我々との関係を問われる存在である。

「ハイウェイ」、それは建築的な実践における「無意識」に光を当てることができる執念。本書はそんな表現がふさわしいかもしれない。この興味深いテーマにおいて同事務所が手がけてきたプロジェクトを、未発表作含め収録している。掲載された文章は多岐に渡り、記事や講演、メモ、プロジェクトの説明からの抜粋に加え、「第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展（2023年）」のフランス館を設計した建築家による写真のスクラップブックによって補完されている。旅先や多くのプロジェクトに取り組む中で撮影されてきたこのイメージ群は、彷徨い歩く彼らの思考だけでなく、取りつかれているような思念をも物語っている。本書は、ある建築的な感性の土台としてある「調査の旅」の原理を反映しているような一冊である。

A collection of texts, projects and images by the Parisian architecture studio on the subject of the highway, the most radical public space ever imagined, but also the most divisive and criticized today, questioning our relationship with modernity.